技術者の基礎知識

【初心者にも分かる】輻射熱、放射熱とは何か?わかりやすく解説する!

輻射熱、放射熱とは何でしょうか?

これらを理解するには、光がものに当たるときを考えるとよいです。その後、光が赤外線の場合を考えていきます。

光がものに当たると、どうなるのでしょうか?こちらの図を見てください。


鏡に光をあてると、一定の方向に光がきれいに跳ね返されます。これを見て、私たちは「光が反射された」と認識します。

表面をやすりで荒らした鏡に光を当てると、ぼやっとした光が跳ね返ります。一定の方向ではなく、いろいろな方向に分散されて反射される結果です。これを見て、私たちは「光が拡散された」と認識します。

透明なガラスに光があたると、光はそのまま通過します。これを見て、私たちは「光が透過した」と認識します。

真っ黒な板に光を当てると、跳ね返りもせず、透過もしません。真っ黒な板が光を全部吸っちゃったからです。これを見て、私たちは「光が吸収された」と認識します。

ということで、光がものに当たったとき、光は跳ね返るか、通過するか、吸収されるかの3パターンの動きをします。

反射率、透過率、吸収率とは

通常は、この3パターンが組み合わさった状態になっております。いくら透明なガラスとはいえ、若干の反射・拡散はありますし吸収もあります。

この3パターンの割合をそれぞれ反射率、透過率、吸収率と呼び、全て足すと1になります。

例えば、反射・拡散の割合が4割、透過が5割、吸収が1割だったら、反射率=0.4、透過率=0.5、吸収率=0.1となります。

この割合は、材質や表面の状態によって変わります。

光を例に挙げて説明しましたが、これら考え方は光に限らず、赤外線や紫外線、マイクロ波を含むさまざまな波長の電磁波にもいえます。そして、反射率、透過率、吸収率は電磁波の波長によって変わります。

輻射熱、放射熱とは何か?

ここからは熱の話をするため、赤外線を例に考えていきます。

温度の高いアツアツの物体は終始「赤外線」を放っています。

これを「輻射」あるいは「放射」といいます。

常温の物体も赤外線を放っていますが、温度が高くなるほど、放つ赤外線の量がうなぎのぼりに増えます。

サーモグラフィーは赤外線の放出量の分布を見える化してくれます。サーモグラフィーを通して見ると、熱いところが真っ赤っかに表示されることはみなさんご存じだと思います。

アツアツの物体が近くにあるとこちらも暑くなってきます。これは、アツアツの物体から放たれる赤外線が自分の体に当たって、体が赤外線を吸収するからです。

アツアツの物体が付近の空気を暖めて気温が上がったからではありません。気温が低くても、アツアツの物体が近くに存在するだけで体が熱されるわけです。

なぜ打ち水をすると涼しくなるのか?

今年の夏はめちゃくちゃ暑くてみなさん参っていると思います。ニュースで流れる最高気温の数字以上に暑さを感じます。

これ、気のせいではありません。輻射のせいです。周りを見て下さい。アツアツのアスファルト、アツアツのブロック塀、アツアツのコンクリート床・・・。我々は、こいつらから放たれる赤外線を吸収して熱くなっています。

空気の温度(気温)とは別に、輻射により熱されているわけです。体感温度が高く感じる理由はこれです。

打ち水がいいのは、アツアツの物体の温度を下げるところにあります。アツアツの物体が冷えることで、その物体から放たれる赤外線が激減します。赤外線の量は温度の4乗に比例するので、物体の温度が数℃下がっただけでも、赤外線は激減するのです。

夏場のエアコンも、部屋の空気を冷やすことだけじゃなくて、部屋の壁や床、天井を冷やすことも考えるべきです。例えば1時間後に切れる設定でエアコンをつけて寝たとします。

エアコンの風を体に当てると、1時間の間は快適ですが1時間後はまさに熱帯夜で眠れません。一方、エアコンの風向きを天井に向けておくと、天井がいい感じで冷えてくれるため、1時間たったあと、天井から放たれる赤外線の量が激減して暑さを感じにくくなります。

放射温度計の仕組み

温度を測りたいものに放射温度計を向けると、そのものに接触させなくても測温できます。原理はサーモグラフィーと同じで、赤外線の放出量の大小を測定して温度に換算しています。

なぜ消防服はギンギラギンなのか?

消防服は光沢のあるアルミで覆われています。これ、赤外線を反射するためです。どういうことか?

消防隊員は激しく燃える火事現場で消火活動にあたります。当たり前ですが、炎はめっちゃ暑いです。よって、ものすごい量の「赤外線」を放っています。普通の作業着ですと、体がすぐに熱されてヤケドしてしまいます。

消防服を着ればアルミが赤外線を反射してくれます。よって、体が熱されにくくなり、ある程度の時間はもつようになります。

真夏の駐車場で、自動車のフロントガラスにつける銀色のサンシェードも、消防服と同じです。あれをつけるだけでだいぶ違います。

打ち水は、熱源を冷やして赤外線量を減らそうという考え方、消防服やフロントガラスのサンシェードは、体に当たる赤外線量を減らそうと言う考え方ですね。

なお、材料の遮熱だけではなく高耐熱化や難燃化を考える上でも、赤外線の反射・拡散というのは重要な考え方ですのでよく覚えておいて下さい。

輻射熱を反射、拡散する材料設計

赤外線を反射して熱されないようにするには、「反射率」「透過率」「吸収率」のうち、反射率を多くすればよいです。

反射率が高いのは光沢のある金属

反射率が高いのは、光沢のある金属です。鏡が光をよく反射することを考えればわかると思います。先ほどの消防服には、反射率の高い、光沢アルミが使われています。ちなみに、金属光沢が落ちると、反射率も落ちます。

屈折率の離れた材料のブレンドも反射率が高い

その他、屈折率の低い樹脂と、屈折率の高いフィラーをブレンドした材料も「反射率」が高いです。樹脂とフィラーの屈折率の差が大きいほど樹脂とフィラーの界面で赤外線が反射されやすくなるからです。これは、Fresnelの法則という名前で知られています。

反射率={(フィラーの屈折率 – 樹脂の屈折率)/(フィラーの屈折率 + 樹脂の屈折率)}^2

樹脂は種類によらず屈折率=1.5くらいですので、材料設計としては高屈折率フィラーを選ぶことが反射率アップの指針となります。

屈折率が高いフィラーは、酸化亜鉛(2.0)、酸化クロム(2.5)、酸化チタン(2.5~2.7)、酸化銅(2.7)、酸化鉄(3.0)あたりになります。特に、酸化チタンは他の顔料と組み合わせてさまざまな着色ができますので、よく使われています。

フィラーの粒径も反射率に効いてくる

樹脂/フィラーブレンド体の場合、他のファクターも重要です。その一つがフィラーの粒径です。

粒径が小さすぎると、赤外線の波がフィラーを迂回できるようになりますので、フィラー界面で反射されづらくなります。逆に、粒径が大きすぎると、フィラーの表面積が減ってフィラーの界面が減ってしまいますので、反射できる赤外線の量が減ります。よって、ほどよいサイズにする必要があります。

ベストなのは、粒子径=波長/2の時です。熱に関係してくる赤外波長の範囲は、波長=1~3μmあたりになりますので、ベスト粒径は0.5~1.5μmだと言えます。

フィラーのほどよい充填量が反射率を高める

あとはフィラーの充填量です。

フィラーが少ないと赤外線を反射できる界面が少なくなるためNGです。逆にフィラーが多すぎると、フィラー同士が接近して凝集したような状態に近づきます。そうなると、赤外線を反射できる界面が少なくなるためNGです。フィラーが寄せ集まって、大きなフィラーのように振る舞うから、といった方が分かりやすいかもしれません。

フィラーの分散性も大事

最後に、フィラー1個1個をちゃんと分散させることも大事です。

いくらフィラーの粒径を最適化したとしても、フィラーが分散していなければ意味がありません。フィラーが凝集すると、大きなフィラーのように振る舞ってしまいます。

赤外線を吸収して熱されないようにする具体策

熱されてほしくない物質の手前に赤外線を吸収する材料を置くことも効果があります。例えば自動車の窓ガラスにつける黒いサンシェード。これが赤外線を吸収してくれるので、車内にいる人は暑く感じません。黒色のものは赤外線を吸収してくれるのです。

ただし、対象物との間に隙間があることが重要です。例えば、樹脂にカーボンブラックを練り込んだものを対象物の上に貼り合わせたとします。ここに当たる赤外線はカーボンブラックが吸収してくれるため、対象物には赤外線が届きません。しかしながら、樹脂+カーボンブラックの層の中で、吸収した赤外線により温度が上がってきて、やがてその熱が対象物に伝わっていきます。よって、隙間を空けて配置する必要があります。

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まとめ

・「反射率」+「透過率」+「吸収率」=1であること

・遮熱するには赤外線の「反射率」または「吸収率」を大きい材料で被覆して、赤外線の「透過率」を小さくすることが有効。

・赤外線の「反射率」が高い材料にするには光沢を出す、あるいは樹脂に屈折率の大きいフィラーを適量ブレンドする。

・赤外線の「吸収率」が高い材料にするには、黒いものにする。

反射させる方法、吸収させる方法というのは、紫外線対策でも共通する考え方です。紫外線についてはこちらの記事が役に立つと思います。

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