金属板や樹脂フィルムといった基材に塗料や接着剤を塗り、加熱・冷却して基材に接着させることを考えます。
基材との接着界面付近には内部応力が発生します。内部応力が大きいと接着が剥がれる原因にもなりますので、十分に注意する必要があります。
内部応力の計算方法
内部応力は次の式でざっくりと見積もることができます。
内部応力 = 温度変化 × 線膨張係数の差 × 塗膜の弾性率
温度変化とは?
温度変化とは、加熱温度と室温の差です。加熱温度が100°C、室温が25°Cならば温度変化は75°Cになります。
ただし、塗膜のTg(ガラス転移温度)が加熱温度よりも低い場合は、Tg-室温を温度変化の項に入れます。
Tg以上では分子鎖の束縛があまりないため、塗膜に応力が溜まらないことを考慮するためです。
線膨張係数の差とは?
基材と塗膜の線膨張係数の差のことです。
塗膜の弾性率とは?
そのまま、塗膜の弾性率のことです。弾性率は厳密には温度によって変わるため、それを考慮しなければなりません。
ここでは温度が上がっても弾性率がほとんど低下しない塗膜材料を前提としています。
式の意味合い
式を見てわかるように、加熱温度から室温に冷却した際の基材と塗膜の熱収縮量の差が内部応力に効いてきます。
そして、同じ熱収縮量の差でも、塗膜が硬いほど内部応力がたまりやすいことを意味しています。
内部応力を小さくするためには?
よって、内部応力を小さくするためには、
・加熱温度を低くする
・Tgの低い塗膜材料にする
・基材との線膨張係数差が小さい塗膜材料にする
・弾性率が小さい塗膜材料にする
といった対策が有効です。
あるいは、アニール処理をして内部応力を低減する考え方もあります。
内部応力の実測方法(反り)
内部応力の実測方法はいくつかありますが、一番わかりやすいのが反りの測定です。
例えば、基材が銅ならば、5cm角か10cm角くらいの銅箔の上に塗膜を塗って加熱します。
室温に冷却したあと、塗膜つきの銅箔を平らなテーブルの上に置きます。
銅箔の四隅がテーブルから何mm浮いているかをものさしで測り、四隅の平均値を出します。
その値を反りとします。
反りが大きいほど、内部応力が大きいと言えます。
反りから内部応力を算出したい方は、こちらの記事をご参照ください。
https://punhundon-lifeshift.com/sori_naibu_ouryoku
[おまけ] 接着を考える上で気をつけること
材料の接着というと、2材料の界面に化学結合が生成してつながるイメージを持つ人が多いと思います。
実際は、今回紹介したような内部応力の大小だったり、こちらの記事で説明しているような基材との濡れ性といったものの方が効くことがしばしばです。