技術者の基礎知識

【初心者向け】半導体の役割、メカニズムを素人がつかめるように解説する(トランジスタ、CPU、メモリ編)

こちらの記事では、半導体を使うことのうれしさと半導体の基本メカニズム、およびLED、太陽電池、ダイオードの動作メカニズムについて説明しました。

【初心者向け】半導体の役割、メカニズムを素人がつかめるように解説する(LED、太陽電池、ダイオード編)スマホやパソコンといった電子機器から、LEDや太陽電池、はたまた車や新幹線のパワーエレクトロニクスまで、さまざまなところで半導体が使われ...

本記事はこれの続編で、CPUやメモリなど、デジタル機器には欠かせないトランジスタについて説明します。

トランジスタの分類

トランジスタには大きく分けてバイポーラトランジスタとユニポーラトランジスタがあります。重要なのはユニポーラトランジスタの方で、MOSFETやTFTといったよく聞くものを含みます。ということで、本記事ではユニポーラトランジスタについて説明します。

ユニポーラトランジスタとは

まず、トランジスタの役割とは電流のオン、オフをするスイッチングだと説明しました。つまり、指示されたタイミングで電子の流れをせき止めたり開放したりするところがトランジスタです。

電子が入ってくる蛇口をソース、電子が流れ出ていく排水口がドレイン、その間で電子をせき止める門がゲートです。ソース=源、ドレイン=排水口、ゲート=門ですので、イメージしやすいかと思います。

ユニポーラトランジスタにはMOSFETとTFTがありますが、ここではMOSFETを例に説明します。

MOSFET

ソースとドレインはn型のシリコン半導体から構成され、ソース電極、ドレイン電極と呼ばれます。

そして、ソースとドレインの間にp型のシリコン半導体が配置されます。そして、p型半導体の上側は酸化されて絶縁体のシリカ(SiO<sup>2</sup>)になっています。シリカの絶縁層を介してp型半導体に電圧をかけられるようになっていて、この電極をゲート電極といいます。

何もしない状態でソースとドレインの間に電圧をかけて電流を流そうとしても、流れません。なぜか?

電流が流れるには、ソースであるn型半導体の中の電子がp型半導体に流入すると同時に、p型半導体の中の電子がドレインのn型半導体に押し出される必要があります。

しかしながら、電子はp型→n型は移動できても、n型→p型には移動できません。ダイオードのところで説明した通り、n型からp型に向けて登り坂があるからです。

ところが、ゲート電極に電圧をかけてやると、p型半導体の中に少量存在していた電子がゲート電極の近くに寄ってきます。そして、ソースとドレインの間に電子が偏在した通路ができます。この通路はシリコンに電子がドープされたn型半導体そのものであり、坂道がなくなって電子が流れるようにあります。

このように、ゲートへの電圧のオンオフで、ソースからドレインへの電流の流れのオンオフを制御できるのがユニポーラトランジスタのメカニズムです。

p型半導体ってキャリアは隙間(正孔)だけで電子はないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そうではありません。シリコンの場合、室温では電子の密度と正孔の密度の積は1020であることが知られていることからも、電子の数は決して0にはなりません。

材料にシリコン半導体を用い、ゲートの絶縁層をシリカ(シリコンの酸化物)としたものをMOSFETといいます。metal-oxide-semiconductor field-effect transistorの略です。MOSのところが材料構成のことを言っていて、FETというのは上記で説明したメカニズムで動くトランジスタのことを指しています。

シリコンを加熱して酸化するだけで絶縁膜を形成できるのがウリです。MOSFETはデジタル機器で大量に使われており、現代社会を支えている電子素子だと言えます。

上記ではソース、ドレインをn型として説明しましたが、反対のものも成立します。

TFT

一方、MOSFETとは別にTFTというものもあります。これは薄膜トランジスタ(Thin-film transistor)の略です。MOSFETではゲート電極がソースとドレインと同じ面にありましたが、TFTでは逆に位置されます。そして、ソースとドレインの間はドープされていないシリコン半導体や酸化物半導体(IGZOなど)、有機半導体が使われます。

何もしなければ、ソースとドレイン間の半導体は絶縁性なので電流は流れません。ゲート電極にプラスの電圧をかけると、半導体の中で電子が密に偏在するパスができ、ソースとドレイン間に電流が流れるようになります。

TFTは薄くできるのが特徴です。

トランジスタとメモリ

パソコンのメモリに使われるDRAM

パソコンのメモリに使われるのはDRAMです。DRAMとは、1個のMOSFETと1個のキャパシタから成るセルを2次元に配置したものです。

キャパシタに電気が貯まっている状態が1、貯まっていない状態が0となります。キャパシタに電気を貯めたり放ったりする役目をMOSFETが担っています。

DRAMは揮発性メモリの一つで、電源を切るとメモリの中身が消えます。

パソコンのSSDに使われるフラッシュメモリ

一方、パソコンのSSDに使われるのがフラッシュメモリです。こちらはMOSFETの構造を少しいじったものが使われます。

先ほど、MOSFETはp型半導体の上に絶縁層、その上にゲート電極があると説明しました。フラッシュメモリでは、絶縁層のp型半導体の間にフローティングゲートと呼ばれる半導体の層をかまします。そして、フローティングゲートとp型半導体の間は薄い絶縁膜で隔てます。

ゲート電圧をかけるとp型半導体からフローティングゲートに電子が注入され、ソースとドレイン間に電圧をかけるとフローティングゲートからp型半導体に電子が逃げます。このオンオフでデータを記憶するというメカニズムです。

電子の出入りは、薄い絶縁層をトンネル効果により行われます。何もしない状態では電子は薄い絶縁層に囲まれているため出入りは起きません。よって、電源を切ってもデータは保管されます(不揮発性メモリと呼びます)。

CPUにもたくさんのMOSFETが使われている

CPUにもたくさんのMOSFETが使われています。

CPUを構成する基本単位は、n型のMOSFETとp型のMOSFETを組み合わせたCMOSと呼ばれるものです。CはComplementary(相補的)の頭文字です。

n型のMOSFETとp型のMOSFETを組み合わせると、消費電力が少なくて済むようになります。どこかのホームページでは、ロープウェーみたいに登りと下りを1動作で同時に行うのに似ている、と説明していました。

CPUは0/1のデジタル演算を大量にこなすところであり、トランジスタを大量に必要とします。

CMOSのサイズは年を追うごとに小さくなっており、今では10nmくらいの微小サイズに至っています。

(余談)イメージセンサ

最近、スマホのカメラでCMOSイメージセンサという言葉をよく聞きます。CMOSを使ったもので、詳しくは書きませんが、従来のCCDに比べて安く作れるのがメリットのようです。

まとめ

トランジスタについて一通り説明しました。半導体分野に明るくない人でも大まかなところは理解できたのではないかと思います。

こういった電子部品は日々のニュースにも出てきますし、仕事をしていても必ずリンクしてくるものですので、本記事でざっくりと把握しておくだけでもきっと役に立つと思います。

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