有機材料を解説する PR

ゴムの焼けやすさは、スコーチタイム(t5)で評価できる

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

スコーチ(scorch)。ゴム材料を触ったことがない方には聞き慣れない言葉かもしれません。

端的に言うと、ゴムの消費期限が切れた状態のことを言います。

そして、その指標となるものがスコーチタイムです。ゴムのポットライフ、消費期限のようなものです。スコーチタイムはゴム材料の良し悪しを評価する上で重要な項目で、スコーチタイムが長いほどスコーチ安定性が高い(消費期限が長い)と言えます。

ここでは、スコーチおよびスコーチタイムについて詳しく説明します。

スコーチとは?

ゴムは最終的に加熱され、架橋構造を形成することでゴムらしい物性を発現します。この過程を加硫といいます。

しかしながら、ゴムは加熱しなくても徐々に加硫が進んで架橋構造ができてしまいます。所定の形に加工してから加硫したいので、加工する前に架橋が進んでは困ります。

このように、未加硫状態のゴムが徐々に加硫する現象のことをスコーチといいます。ゴム焼け、ゴムが焼ける、ということもあります。

スコーチタイム(t5)とは?

スコーチのしやすさを表す指標が「スコーチタイム」です。t5とも言います。

ムーニー粘度計で測定することができます。

ムーニー粘度計についてはこちらを見ていただければと思います。

ゴムの粘度指標である「ムーニー粘度」の意味、測定方法、解釈「ムーニー粘度」とは、ゴムの加工性、成形性、流れやすさを表す指標です。ムーニー粘度計と呼ばれる装置で測定することができます。 ゴムの粘...

通常は、温度を125℃として測定します。ムーニー粘度の測定と同じく、1分予熱し、その後ローターを回して粘度を追跡します。粘度の最低値(Vmと表すことがあります)からムーニー粘度が+5M増えたところをスコーチタイムとします。

t5の5は、この5Mに由来します。

スコーチタイムは予熱時間も含みます。つまり、予熱を始めたところを0分とします。

スコーチしやすいゴムは、スコーチタイムが短くなりますし、スコーチしにくいゴムはスコーチタイムが長くなります。

ゴムによっては60分を越えるようなものもあります。あまりに長いものは、例えば60分で測定を止めて、>60分とすることもあります。(時間がもったいないですし)

スコーチタイムの注意点

スコーチタイムは絶対的な指標ではありませんので、配合が大きく異なるゴムのt5を比較することにあまり意味がありません。ベース配合が同じで、加硫剤や加硫促進剤の量や種類を振ったときのスコーチ性の大小を比較するのには使えます。

スコーチを左右するもの

例えば、リターダ(加硫遅延剤)を配合すると、スコーチタイムが延びてゴム焼けしにくくなります。リターダではCTPがよく使われます。

クロロプレンゴムは他のジエン系ゴムに比べてスコーチしやすく、ポットライフが短いです。クロロプレンゴムの場合、チウラム系の加硫促進剤がリターダとして機能します。

ゴムは吸湿するとスコーチ安定性が悪くなる傾向があります。梅雨の時期は要注意です。

ゴムの混合中に熱がかかりすぎると、加硫が進んでスコーチタイムが短くなることもあります。