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ゴムの粘度指標である「ムーニー粘度」の意味、測定方法、解釈

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「ムーニー粘度」とは、ゴムの加工性、成形性、流れやすさを表す指標です。ムーニー粘度計と呼ばれる装置で測定することができます。

ゴムの粘度といえば「ムーニー粘度」です。JIS規格にも定められており、ゴムにおいては外せない評価項目です。

ムーニー粘度の測定方法

測定装置

ムーニー粘度計では、円盤に棒をつけた形のロータが円筒状の空間に設置されています。この空間内をゴムで満たし、ロータを回転させることで、ロータがゴムから受ける抵抗力(トルク)を測定します。

通常は、ロータの下と上に未加硫のゴム片を載せ、上からフタをして密閉された円筒空間を形成する際にゴムをオーバーフローさせることで、円筒空間内にゴムが充填された状態にします。

温度、回転数

測定温度は任意に選べますが、通常は100°Cにします。JIS規格では100°Cと指定されています。

ただし、100°Cではなく125°Cで測ることも多いです。スコーチタイムは基本的に125°Cで測定するため、ムーニー粘度とスコーチタイムを同時に測定できて効率的だからです。

スコーチタイムについてはこちらをご参照ください。

ゴムの焼けやすさは、スコーチタイム(t5)で評価できるスコーチ(scorch)。ゴム材料を触ったことがない方には聞き慣れない言葉かもしれません。 端的に言うと、ゴムの消費期限が切れた状態の...

なお、ゴムの粘度は温度により変化しますので、異なるゴムの粘度を比較するときは測定温度を揃える必要があります。

回転数は2回転/分です。固定値です。こちらもJISで定められています。

測定の流れ

常温のゴムを設置し、上下挟み込んで密閉したら測定スタートになります。

初めの1分は、ロータは回さずそのままです。常温のゴムが設定温度に加温され、粘度がぐっと下がります。予熱ですね。その後、ロータを回します。ロータを回してから4分後、つまり測定スタートから5分後の粘度を読み取ります。

ムーニー粘度は指標である

ムーニー粘度は、指標です。ロータにかかるトルクが8.3N・mになる時を100とした指標で、粘度の大小を表現します。この指標をムーニー単位とも言いまして、100M、のようにMをつけて表現することもあります。

ムーニー粘度の表し方

「ML(1+4) 100°C」のように表します。

Mはムーニー単位、Lはロータの形状、1+4は予熱1分、ロータ回転4分の意味です。100°Cは測定温度です。

(補足)ロータ形状

デフォルトはL形と呼ばれるものです。粘度が高いものを測るときはS形と呼ばれるロータを使いますが、特殊なケースかと思います。

数値のイメージ

例えば原料ゴムだと、ML(1+4)125°Cが20〜30だと粘度が低いなー、70〜80だと粘度が高いなーという感じです。あくまでもイメージです。

ムーニー粘度と、他の粘度測定法との関係

ゴムの粘度はせん断速度によって変わります。せん断速度とは、ゴムが流れる速さのことです。せん断速度が大きいと、ゴムの粘度は低くなります。

こちらの図に示しますように、ムーニー粘度はこの辺りのせん断速度領域の粘度に対応します。射出成形や押出成形のようなせん断速度が大きい領域はカバーしていませんが、この領域におけるゴム粘度の大小も、ムーニー粘度の大小でだいたいイメージすることはできます。

なお、動的粘弾性測定装置(RPA)やキャピラリーレオメータを使えば、広いせん断速度領域の粘度を評価することができます。

ムーニー粘度ではせん断速度一定ですが、RPA、キャピラリーレオメータではせん断速度を変えて粘度を評価することができます。例えば、低せん断速度では配合Aが配合Bより高粘度だったとしても、高せん断速度では逆転するケースもあり、そのような挙動を明らかにすることができます。

とはいえ、日常の評価はムーニー粘度で十分かと思います。