技術者の基礎知識

【初心者にもわかる】簡単なコスト計算の考え方 〜材料費・加工費から直接製造原価まで〜

製造業の人にとって、コスト計算の知識は必要不可欠です。

例えば、製造条件を変えてコストを安くできないか、製品に新機能をつけたらどのくらいコストアップするかというように、コストは仕事において日々気にするファクターです。

ここでは、経理の知識に明るくない人に向けて、コスト計算の方法を超簡単に説明します。

まずはコストの構成から

コンタクトレンズを1個作って販売することを考えます。

売値の構成


まず、コンタクトレンズを作るのにかかった費用を「製造原価」といいます。

作ったコンタクトレンズを販売するのにかかった費用を「販売費」といいます。それ以外にのっかってくる費用を「一般管理費」といいます。「販売費」と「一般管理費」は一つにまとめて「販管費」と呼びます。

ということで、コンタクトレンズを1個作って販売するには、「製造原価」+「販管費」の費用がかかります。

最後に、ここに「利益」をのせたものが売値になります。値札につく価格のことです。

私たちがコントロールできるのは直接費

「製造原価」は、直接費と間接費に分けて考えます。


まず間接費から。間接費とは、コンタクトレンズを1個も作らなくても発生する費用のことです。例えば、製造現場ではたらく人たちの給料。コンタクトレンズを作ろうが作らまいが、みなさんには給料を支払わないといけません。

直接費とは、純粋にコンタクトレンズを1個作るのにかかる費用のことです。

間接費って、経営者や管理職でない人にとっては関係ないんですよね。製造現場の人の給料をコントロールできる立場にないからです。

したがって、メーカーの中心(製造部門、設計部門、開発部門)に在籍する担当者レベルの人にとって重要なのは直接費です。直接費であれば、自分たちの工夫や裁量でコントロールできます。

同じように、「販管費」も直接費と間接費に分けて考えます。販管費の間接費は、例えば広告費のようなものです。我々がコントロールできない範囲です。

まとめるとこんな感じ

直接費と間接費にわけて整理するとこのようになります。


直接費のことを「直接原価」と呼ぶので覚えておいて下さい。我々がコストを考えるときは「直接原価」に着目します。以下、「直接原価」に着目して、実際の使い方をみていきます。

実際にコスト計算するときの流れ

「直接原価」の中には、直接製造原価と”直接販管費”の2つがあります。

“直接販管費”の取り扱い

“直接販管費”という言葉、実は存在しません。実際には「販売直接費」といいます。略して「販直費」ともいいます。ただ、ネーミングが分かりにくいのでここでは便宜的に”直接販管費”と呼ばせて下さい。

“直接販管費”は実績に応じた数字を使います。コスト試算などの場合は、簡易的には直接製造原価の○○%という形で試算します。例えば、直接製造原価が500円/個、割合が10%なら””直接販売費”は50円/個になります。

ちなみに、”直接販管費”というのは、荷造り費用、運送費用といったものです。

「直接製造原価」のうち、原料費を考える

製品は原料を加工して作られますので、直接製造原価は「原料費」と「加工費」に分けられます。

原料費はシンプルです。原料の単価[円/kg]に製品1個に使う量[kg]をかければOKです。ただし、製品の不良率を考慮しておく必要があるため、不良分を含めた数字にします。つまりこうです。

原料費[円/個] = 原料単価[円/kg] × 製品1個に使う量[kg] × (1 + 不良率)

シリコーン樹脂の単価が2,000円/kg、コンタクトレンズ1個に使う量が0.01kg、不良率が5%だとすると、

コンタクトレンズの原料費[円/個] = 2,000円/kg × 0.01kg × (1+0.05) = 21円/個  となります。

「直接製造原価」のうち、加工費を考える

加工費はこのように計算します。

加工費[円/個] = 部門単価[円/h] × 製品1個を作る所要時間[h] × (1 + 不良率)

部門単価とは、製造ラインで製品を作るのにかかる費用です。1時間あたりの費用です。この費用には作業者の人件費や設備の動力費などが含まれます。部門単価は工場や製造ラインごとに異なりますので、関係者に聞いてみましょう。

部門単価に製品1個を作る所要時間をかけて、不良分を含めた数字にすればOKです。

担当者レベルの人にとって、コスト低減を考えるとはどういうことか?

ここまで見てきてわかると思いますが、担当者レベルの工夫で改善できそうなところはこの3つです。

1)原料単価[円/kg]
2)不良率
3)製品1個を作る所要時間[h]

1)原料単価を下げるには、使うの原料を種類を変える、種類は変えずに海外メーカーの安価な同等品に切り替えるといったことを考えます。

2)不良率を下げるには、加工で不良が起きにくい原料を使う、加工条件を見直すといったことを考えます。

3)製品1個を作る所要時間を短くするには、作業のムダを省く、短時間で作業を終えられる治具を作るといったことを考えます。

担当者レベルの人がよく聞かれること

コストの話は打合せで必ず聞かれると思います。これに答えられるようにするには、どこを把握しておけばいいのでしょうか?よくある質問をまとめてみました。

質問1:限界利益ってどれくらいなの?

「約○○%です。」と答えられるようにしましょう。売値のうち、直接原価を除く分が限界利益でした。売値のうち限界利益が何%占めるかを把握しておけばOKです。製品の利益率を比較するときは限界利益のパーセントを見ることが多いので、よく聞かれます。もちろん、限界利益は製品によってまちまちです。

質問2:直接製造原価はどのくらい安くなるの?

直接原価のうち”直接販管費”は、直接製造原価に係数%をかけて試算することが多いため、聞かれることはありません。聞かれるのは「直接製造原価」の方です。

コスト低減活動をやった結果、どのくらい安くなったのか。あるいは、新しい製品を開発した結果、現行品に比べてどのくらい高くなったのか?

そういう質問を受けた場合は、直接製造原価のビフォーアフターで説明することが多いです。やる前、やった後の直接製造原価を計算し、横並びで示すといいですね。

質問3:競合他社に比べて当社のコストは高い?安い?

こちらも直接製造原価で比較します。

原料費については、競合他社品を手に入れて原料組成を分析するなり、特許情報から原料組成を類推するなどしてざっくり試算してみます。原料単価が分からなければ、原料メーカにざっくり単価を聞けばOKです。

加工費については、特に情報がなければ当社と同じでよいかと思います。加工費に関しては情報が乏しいのでやむを得ないですね。なので、直接製造原価ではなくて原料費だけで比較することもあります。

まとめ

製品の売値を直接費と間接費に分けて見てきました。担当者レベルが見るべきは直接費でした。直接費は直接原価とも呼ぶことも説明しました。直接原価のうち、”直接販管費”について触れることは少なく、直接製造原価に着目してコストの議論をすることが多いことも説明しました。

メーカに勤務している入社の浅い人にとって、コスト計算は分かりにくいと思います。ポイントを絞って体系立てて説明してくれる人も少ないかと思います。コストを考えるうえで本記事が参考になれば幸いです。