高分子材料の基本特性に「硬度」があります。
硬度は、硬い材料の場合はデュロメータD(タイプD)、軟らかい材料の場合はデュロメータA(タイプA)で表現されます。
硬度と弾性率、何らかの相関がありそうですが、実際に換算は可能なのでしょうか?
デュロメータA硬度と弾性率は換算可能
デュロメータA硬度と弾性率は次の式で換算可能です。
デュロメータAの硬度 ={(8 × a × H0 × G – P0)/((8 × a× H0 × G)+ P100 – P0)}× 100
={((8/3) × a × H0 × E – P0)/(((8/3) × a × H0 × E)+ P100 – P0)}×100
a:押針の半径(0.51mm)
H0:押針の高さ(2.5mm)
P0:硬度が0の時の荷重(0.55N)
P100:硬度が100の時の荷重(8.05N)
G:せん断弾性率(単位:MPa)
E:ヤング率(単位:MPa)
式中のパラメータa、H0、P0、P100は定数です。
余談ですが、デュロメータA硬度計の押針の先端の半径は0.395mm(直径0.79mm÷2)です。しかしながら、押針は円柱ではなく円錐になっていて、押針の根元の半径は0.625mm(直径1.25mm÷2)です。したがって、硬度と弾性率の換算では便宜上、双方の半径(0.395mm, 0.625mm)の平均である0.51mmを使います。
詳細は『ゴム試験法 第3版』のp.203に詳しく書かれています。
デュロメータA硬度と弾性率の関係グラフ
デュロメータA硬度と弾性率の関係をグラフにしたものがこちらです。
これを見れば、デュロメータA硬度から弾性率を見積もることができます。
横軸のスケールを大きくしたバージョンはこちらになります。
デュロメータD硬度と弾性率
デュロメータD硬度と弾性率の関係式は調べた限りでは存在しませんでした。
また、デュロメータA硬度とデュロメータD硬度は全く別物ですので、こちらも換算が難しいです。
ただし、デュロメータA硬度とデュロメータD硬度の関係を経験的に示した表がこちらのp.106に載っています。
この表によると、
デュロメータD硬度が10 →デュロメータA硬度の約45に相当
デュロメータD硬度が20 →デュロメータA硬度の約65に相当
デュロメータD硬度が30 →デュロメータA硬度の約80に相当
デュロメータD硬度が40 →デュロメータA硬度の約90に相当
デュロメータD硬度が50 →デュロメータA硬度の約95に相当
という対応になっています。
この情報と、先ほどのデュロメータA vs. 弾性率の関係グラフを見れば、デュロメータD硬度と弾性率のざっくりとした換算が可能かと思います。
余談:デュロメータAとデュロメータDの使い分け
JIS K6253-3には、デュロメータのタイプの選択方法について次のように書かれています。
タイプDデュロメータで硬さが20未満の値を示す場合は、タイプAを用いる。
タイプAデュロメータで硬さが20未満の値を示す場合は、タイプEを用いる。
タイプAデュロメータで硬さが90を超える値を示す場合は、タイプDを用いる。
ゴムやエラストマーだとタイプA、一般的なプラスチックだとタイプDを使うイメージです。
タイプAの硬度20〜90ですと、弾性率は数MPa〜20MPa程度です。
ゴムやエラストマーの弾性率はそれくらいの数値イメージだということです。
タイプEはスライム状のもののように相当軟らかい材料に使うものと思います(筆者は使ったことがありません)。