内部応力や残留応力は、剥離、ストレスクラック、ソルベントクラック、クレージングといった不良を議論する上で欠かせないパラメータです。
ここでは、簡単に測定できる「反り」の値から内部応力を計算する方法について解説します。
反りとは?
文字通り、フィルムやシートがどれくらい反っているかを表すものです。
フィルムやシートを平らなテーブルの上に置いた時に、隅っこがテーブルからどのくらい浮き上がっているかをスケールで測ります。
例えば、基材が銅ならば、5cm角か10cm角くらいの銅箔の上に塗膜を塗って加熱します。
室温に冷却したあと、幅が1〜3cmの短冊にカットし、塗膜つきの銅箔を平らなテーブルの上に置きます。
片方の端をテープやおもりで固定し、もう片方の端がテーブルから何mm浮いているかをものさしで測ります。
その値を反りとします。

内部応力の計算方法
まずは、曲率半径というパラメータを計算します。
曲率半径=(短冊の長さ×2)2/(8×反り) + 反り/2
そして、内部応力を次の式で計算します。
内部応力=(基材の弾性率)×(基材の厚み)3/(12×塗膜の厚み)×2/(曲率半径×(基材の厚み+塗膜の厚み))×(1+(1/3)×((基材の厚み)/(基材の厚み+塗膜の厚み))2)
計算例1
例えば、厚み0.1mm(100μm)の銅箔に厚み0.05mm(50μm)の塗膜がのった短冊サンプルを考えます。
短冊の長さは100mmとします。
銅箔の弾性率は110GPaとします。
反りが20mmだったとすると、
曲率半径=260mm
内部応力=0.0082GPa=8.2MPa
となります。
サンプルの構成等によりますが、内部応力はだいたい数MPaになるかと思います。
計算例2
厚み1mmの樹脂フィルムに厚み0.05mm(50μm)の塗膜がのった短冊サンプルを考えます。
短冊の長さは100mmとします。
樹脂フィルムの弾性率は5GPaとします。
反りが8mmだったとすると、
曲率半径=629mm
内部応力=0.0194GPa=19.4MPa
となります。
引用文献
引用文献はこちらになります。
こちらの文献では、PETフィルムにUV効果樹脂を塗布したもので内部応力を計算しています。そして、塗膜のアクリル当量が大きいほど内部応力が低くなる傾向を確認しています。
内部応力を計算するメリット
内部応力を計算するメリットは、データに信頼性が出ることです。
反りの大小で間接的に内部応力について議論するのでも良いのですが、やはり応力値(MPa)として示した方がインパクトが強くなります。
CAE解析で計算した内部応力との整合性を見るときにも役に立つでしょう。
ということで、ぜひ内部応力の計算をやってみてください。