有機材料を解説する

プレス機は蒸気(スチーム)、電熱(電気加熱式)のどちらを選ぶべきか?

樹脂やゴムを所定の形状に加工する際、プレス機を使います。

樹脂またはゴムを金型にセッティングし、上下のプレス板で挟み込んで加熱します。

プレス機には蒸気(スチーム)で加熱するタイプと、電熱(電気加熱式)で加熱するタイプがあります。

それぞれどのように使い分けるとよいのでしょうか?

蒸気プレスのメリット、デメリット

蒸気プレスのいいところは、加熱速度が非常に早いことです。

そして、温度均一性や温度バラツキが小さいことです。

この理由は後述します。

一方、蒸気プレスのデメリットはボイラーやその周辺機器、蒸気配管など、設備の取り回しが複雑なところです。

ボイラーや配管の管理やメンテナンスも少々煩雑です。

電熱プレスのメリット、デメリット

電熱プレスのいいところは、設備が簡素化できることです。

電熱プレスのデメリットは、加熱速度が遅いことです。

また、最近はそうでもないかもしれませんが、蒸気プレスに比べると温度均一性や温度バラツキが大きいイメージです。

蒸気加熱のメリットを説明する

蒸気加熱だとどうして加熱速度が早く、温度均一性や温度バラツキが小さいのでしょうか?

これらは蒸気加熱の原理を考えると理解できます。

蒸気加熱の原理

まず、ボイラーの中で水が加熱されます。100℃になると水が沸騰し、蒸気に変わります。

圧力が大気圧(0.1MPa)では、100℃の液体と100℃の気体が平衡状態で共存している格好になります。

さらに加熱をすると、ボイラーの中の温度がドンドン上がり、圧力も増してきます。

圧力が高校で習ったPV=nRTの式を思い出せば分かると思います。

水の比重1 = (n × 水の分子量18)/Vですので、V=18n。

PV = nRTに代入すると、18Pn = nRT、つまり18P=RTとなります。

PとVは比例関係にあるということです。

100℃ではP=0.10MPaでしたが、150℃ではP=0.48MPa、180℃ではP=1.00MPaとなります。

蒸気は気体ゆえ、圧力が決まると温度も決まる点が便利なところです。

ちなみに、水と蒸気が平衡状態にあるときの蒸気の圧力を飽和蒸気圧といいます。

蒸気の熱をプレス板に渡す伝熱メカニズム

さて、所定の温度に昇温した蒸気は、配管を通じてプレス機のプレス板に運ばれます。

通常はボイラーで160〜180℃くらいの蒸気を作っておいて、ボイラーとプレス機の間に減圧弁をかまして所望の温度になるよう、蒸気の圧力を下げてからプレス機に入れます。

ぬくもっていないプレス板の中に蒸気がたどり着くと、蒸気は水に液化します。このとき、熱が発されてプレス板が少しぬくもります。

気体が液体になることを液化または凝縮といい、この時に発される熱を凝縮熱といいます。

ちなみに、液体から気体になるときは、周りから熱を吸い取ります。これを気化熱といいます。

汗をかいてそのままでいたら、汗が気化するときに体温を奪われて風邪をひく、っていうやつです。

凝縮熱、気化熱は熱の方向が違うだけで、その量はほぼ同じです。そして、この熱の量、結構でかいんです。

蒸気が液化して細かい水滴になり、蒸気が減ります。しかしながら、すぐさまボイラーから蒸気が供給されます。

蒸気が液化してプレス板がどんどん熱せられ、プレス板が蒸気と同じになったら飽和します。

凝縮や気化が起きている間は温度が変わりません。

大気圧下で凝縮や気化が100℃一定で起こることを考えれば分かると思います。

蒸気加熱だと加熱速度が早い理由

蒸気加熱だと加熱速度が早いのは、蒸気の凝縮熱がでかいためです。

蒸気→水滴の状態変化でバンバン熱が発せられますから、プレス板もガンガン昇温します。

蒸気加熱が温度均一性、温度バラツキに優れる理由

蒸気加熱が温度均一性に優れるのは、蒸気→水滴の状態変化で温度が変わらないからです。

温度バラツキが小さいのも同じ理由です。

電熱プレスの場合、電流のオンオフで温度を一定に保とうとするため、オンのときに少しオーバーシュートし、オフのときに少しアンダーシュートします。

結果、温度バラツキが大きくなります。温度バラツキというのは、設定温度±○○℃の○○のことです。

おまけ:顕熱、潜熱、その他

蒸気加熱の話になると「顕熱」と「潜熱」という言葉がよく出てきます。

中学や高校のときに習って以来、耳にしなくなった人の方が多いのではないでしょうか?

今回の例ですと、液体の水の温度を上げるのに必要な熱が「顕熱」、液体の水を気体の蒸気に状態変化させるのに必要な熱が「潜熱」です。

凝縮熱とか気化熱がまさに潜熱です。

「飽和蒸気圧」もそうですが、「顕熱」や「潜熱」ってすぐにイメージが湧きにくいです。

ですので、本記事ではこれらの言葉を使わずに書きました。

それと、本記事では超単純化して説明しましたが、ボイラーによっては飽和蒸気圧よりも圧力を低くして蒸気中の水分を減らすなど、さまざまな工夫がされています。

ここらへんの話はややこしいので割愛しました。