技術者の基礎知識

同位体とは?同位体の存在比から生物の年代や大昔の気温がわかる

地球が誕生して46億年が経過していますが、そのうち、人間が文字で書き記した記録でさかのぼれる期間というのはたかだか数千年です。これより昔のことについて知る方法として同位体分析は非常に重要です。

同位体分析をすれば、大昔のことをかなり正確に推定することができます。

同位体とは?

釈迦に説法かもしれませんが、原子というのは原子核(陽子+中性子)と電子から成っています。原子核の周りを電子が飛び回っていて、電子が飛び回っているエリアが1つの原子の玉として表現されます。

原子の種類は陽子の数で決まります。陽子が1個の原子は水素(H)ですし、陽子が6個の原子は炭素(C)です。

原子の重さは陽子と中性子の合計数で決まります。電子は軽すぎるため無視できますし、陽子と中性子の重さはほぼ同じだからです。例えば、普通の炭素原子ですと陽子が6個、中性子が6個ですので合計12個になります。この12という数を質量数といいます。普通の酸素原子だと陽子が8個、中性子が8個ですので合計16個。質量数が16です。炭素原子に比べて16/12≒1.3倍重いことが分かります。

さて、同じ炭素原子でも、重さの違うものがあります。世の中のほとんどの炭素原子は、中性子が6個で質量数が12の12Cですが、ごく一部は中性子が7個で質量数が13の13C、中性子が8個で質量数が14の14Cというものが存在します。同じ原子でも中性子の数が違っていて、その結果、重さが異なるものを同位体といいます。

12Cは全体の99%、13Cは1%、14Cは超レアです。そして、14Cに関しては若干不安定で、長い年月をかけて徐々に窒素原子(N)に変化します。変化するときに放射線を出します。14Cのようなものを「放射性同位体」と呼びます。

酸素の場合、16C、17C、18Cの3つの同位体があります。世の中の99%以上の酸素原子は16Cで、ごく僅かの割合で17C、18Cが存在します。3種類とも安定です。

炭素の同位体の存在比から生き物の年代を推定する

動物、植物は外から栄養分を取り込んで代謝を繰り返しているため、炭素の同位体の存在比は常に一定になります。しかし、寿命を迎えて死んでしまうと代謝が止まります。体内の炭素のうち、14Cは放射線を出しながら徐々にNに変わっていきます。

よって、死んでからの経過期間が長くなるほど、12C、13Cリッチになっていきます。12Cと13Cは安定で変質しないからです。

14Cが減っていくスピードは決まっています。5730年で半分になり、5730年×2=11460年で1/4になります。この原理を使うことで、動物や植物の化石から年代を推定することができます。

実際にはこの式で計算できます。

t = -(5730/ln2)*ln(現在の14C存在比/生きていたときの14C存在比)

生きていたときの14C存在比は、自然界の14C存在比と同じです(昔も今も自然界の14C存在比が変わらないことを前提として)。

たとえば、ある化石をみつけたとして、その14C存在比が自然界の14C存在比の1/10だったとしたら、

t = -(5730/ln2)*ln(0.1) = 1.9万年

となります。つまり、化石になった生物の生存時期は今から1.9万年前ということになります。

酸素の同位体の存在比から大昔の気温を推定する

南極やグリーンランドの陸地には分厚い氷が上積みされています。これを氷床といいます。地層を調べるように、この氷床を調べることで、大昔の気候を推定できます。

例えば、氷の中のO同位体の存在比が分かれば、当時の気温を推定することができます。氷床は、海水が蒸発して雪となって降ったものからできます。蒸発しやすいのは18Oからなる重い水分子よりも16Oからなる軽い水分子の方です。つまり、気温が高いと海水の蒸発が多くなり、軽い水分子が海水から氷床にシフトすることになります。16Oの割合が多い層は高温期、18Oの割合が多い層は低温期と推定することができます。

気温が高くなると、海水には重い水分子が濃縮されるため、海に住んでいる貝の成分(炭酸カルシウム)も18Oリッチになります。貝が海底に堆積していくので、海底地層を調べることでも気温を推定することができます。地層が地殻変動の影響を受けずに残っていることが前提ではありますが。