私がさまざまな組織に身を置いて感じたことがあります。
厳しい上下関係、年功序列の組織文化というのは相当な規模の損失を生んできたのではないか、ということです。
たとえポテンシャルの高いメンバーが集まっても、このような組織だとうまくいかないどころか、世に損失をもたらすばかりだと。
大げさに書いているようにみえるかもしれませんが、これは本当だと思います。
前半で、良い組織とはどんな組織なのかについて考えをまとめます。後半で、悪い組織について実例を交えてまとめます。
安心安全が保障されると、コミュニティは自走する
先日、優れたコミュニティのことをうまく言語化したことばに出会いました。
「安心安全が保障されると、コミュニティは自走する」
このことばは、新R25のこちらの記事に載っていたものです。
この記事を読んで、ああこれはまさに私が所属していた研究室のことだなと思いました。
自由闊達な研究室だった
私がかつて所属していた研究室は、とても自由な雰囲気がありました。
何時に来てもいいですし、何時に帰ってもOKでした。自分の裁量で研究活動を進められましたし、教授や助手の先生から何か指示されることもほとんどありませんでした。
これは、同分野の他の研究室は見ると異質でした。
というのは、他の研究室は管理が厳しくて、朝来る時間が決められていたり、今日やることを朝一番に決めて、常にトレースされたりといった状態でした。しかも、朝早いのに帰りも遅かったですし。
そんな自由闊達な研究室でしたが、多くの優れた研究成果が出ていました。
先生たちが学生をうまく野放しにして、学生たちが自分の裁量で自発的に成果を挙げるという構図になっていました。
そして、研究室の卒業生たちは社会でも活躍していて、中には有名になった人もいます。
研究室の同窓会で皆が口を揃えて言うのは、大学の研究室時代に普通にやってきた「自分の裁量で仕事を進める」スタイルが、会社の同期の中で見ると実は全然当たり前じゃなかったという話です。
これは私も実感としてあります。
言われたらすぐにごりごりとやる人は結構多いんですが、相手の言い分を丸呑みせずに自分で考えて仕事を進める人って割と少ないと思います。
偉そうに言えるレベルではありませんが、私は後者のタイプです。これは研究室生活で身につけた研究スタイルのおかげだと考えています。
研究室の先生はまさに「安心安全を保障」してくれる存在だったのでしょう。何の実績も無い一学生に期待を寄せてくれる、かといって”管理”したり”教育”する訳ではなく、ただただ自由にさせて学生が自発的にものごとに取り組める環境を提供する。
こう書くと、何も成果を生まずに遊びほうける学生が出てきてもおかしくないのですが、そうならなかったのは、この人からの期待に応えたいと学生たちに思わせる、教授の先生の人望の大きさに尽きます。
何か新しいことを生み出すには、こういう組織が理想だと思います。
一人一人が自分の頭で考えるため人は育ちますし、成果は出ますし、合わない人はすぐ辞めて別のコミュニティに移ることができます。
これからの時代、上意下達の組織では厳しい
体育会系のような上意下達の組織では厳しいと思います。
指示を忠実に実行するだけの思考停止人間ばかりになりますし、成果はトップの判断力で全て決まります。
組織に合わない人もそのまま留まりがちになります。
今の日本、まだまだ後者の上意下達の職場が多いのではないでしょうか?
上司-部下の上下関係が固定化していれば、部下が反抗したり、仕事をすっぽかすことを心配しないで済みますし、万が一そうなっても強く出ることができます。
上意下達の職場が上司の精神安定剤になっていると言えます。極端な話、部下が上司を信頼していなくても、組織は存続してしまいます。
それから今の時代、ほとんどの人、特に若い人は基本的な欲求は満たされていて、マズローの欲求5段階で言う「Self-Actualization」を目指すようになってきています。
「Self-Actualization」とは自分らしさを顕在化させたいという欲求、つまり、自分らしく生きていく、自分の良さを発揮して生きていく、自分がしたいことをして生きていくという欲求です。
新しいことを生み出す組織じゃなくても、今の人たちにとって上意下達の職場は、「Self-Actualization」の欲求が満たされず、思考が停止して心身を消耗していくだけの地獄でしかないと思います。

上の世代に取っては精神安定剤、下の世代にとっては地獄。そして、新しいことが生まれない。いいことがありません・・・。
下意上達
パナソニック・CNS社の樋口社長のインタビュー記事です。
“上意下達が過ぎて正しいことを正しいと言いづらい雰囲気があると、悪い情報が隠蔽され、上に伝わりません。私は、こういうカルチャーが意思決定を遅らせ、最終的に会社を滅ぼした例をたくさん見てきました。
それを防ぐためには、オープンな環境と、現場の意見がスピーディーに上司に伝わる雰囲気が必要です。CNS社には社長室もないし、東京本社はフリーアドレスで固定のデスクもありません。
実は、創業者である松下幸之助も「下意上達」という言葉を残しています。やはり、オープンさがなくなると、会社は滅びるということなんです。”
昨今の大企業の不正問題や、今話題になっている日大アメフト部の危険タックル問題。これらも、ヒエラルキーの強い上意下達の組織体制が原因だと思います。
馬鹿を見るのは若い世代です。
若い世代が拒否反応を示すことで上意下達の組織の持続性を脅かし、根本的改善または内部崩壊を促すほかありません。
日頃から忙殺されないこと、組織にどっぷり浸からないようにすることです。
そうしないと思考が停止してしまい、自分の体の拒否反応すら感じ取れなくなりますよ!
小さな所帯に強権的なリーダーは要らない
長野の山奥のパン屋さん「わざわざ」の店主のnoteを読んで感銘を受けました。
note3本目書きました。今回は趣向を変えてTwitter市場調査からの意思決定について。皆さんに読んでいただけるのが一番嬉しいです。リツートのご協力お願いいたします。「取材を受けるべきか、みんなに聞いてみた」|平田 はる香 @wazawazapan|note(ノート) https://t.co/ymhx0x1YwJ
— わざわざ+問tou 平田はる香 (@wazawazapan) April 28, 2018
noteの中に、次のようなフレーズがあります。
“だってこれはわざわざの問題なんですもの。みんなで考えるべきだと思います。私は、意見が出し尽くされた時に意思決定を下すだけです。これが仕事です。”
これは、小所帯の組織におけるリーダーシップの真髄なのかもしれない、と思いました。
組織はフラットな関係であるべき
組織に関わる問題は、リーダー一人があれこれと考えて決断を下すのではなく、メンバー全員で意見を出し合って決めるものだと思います。
そうしないと、メンバーはその問題に関心を持たなくなってしまいます。自分にも大いに関係する問題なのに、それに対する影響力が担保されていないがために、どこか他人事のように感じてしまうのです。
メンバー全員で意見を出し合うことが重要だと分かっていても、それができない組織もたくさんあると思います。
私の職場も昔はそうでした。
ヒエラルキーを強く意識する上司だったため、上司と部下が完全なる主従関係になっていました。
何か意見を言っても、ちゃんと調べたのか?、どうやってやんの?と圧迫面接のように迫られるため、何も言わないことが我々にとって最善の選択となっていきました。
なので、全員でミーティングをしても、我々部下は誰も発言しないわけです。
メンバー全員の率直な意見を抽出するためには、主従関係をなくさないといけない。
リーダーを含むメンバー全員がフラットな関係にあり、かつリーダーの前でも臆することなく意見を言える関係であることが必要です。
事実、私の職場では上司が変わって、みんなが意見するようになりましたから。
リーダーとは持ち回りの学級委員のようなものだ
川北義則の書籍『30代でやっておきたいこと』に、こんなフレーズがあります。
“リーダーシップは集団の成員の間に分散されており、各成員が、仕事の達人、道化役、母親的役割など、それぞれ重要な役割をかわるがわるに果たすのである。つまり、これからのリーダーとは、持ち回りの学級委員のようなものだと思ったほうがいい。”
リーダーって役職じゃなくて役割なんですね。「持ち回りの学級委員」という言葉は言い得て妙です。
だから、上下関係になること自体、やっぱりおかしいと思います。
会社は大きくても、職場一つ一つは小さな所帯の組織だ
会社は規模にもよりますが大所帯です。
しかしながら、普段一緒に働いているのは、課やグループのメンバーです。課やグループが組織の単位であり、まさに小所帯なんですね。
ですので、前述のリーダーシップ論は会社勤めの我々にも言えることなんだと思います。
『30代でやっておきたいこと』についてはこちらの記事にまとめています。
