ゴムを取り扱った人なら一度は耳にしたことがある等価加硫量(ECU)。ここでは等価加硫量の意味や使い方について簡単に説明します。
等価加硫量が役に立つ場面
例えば、加硫条件が150℃×30分と決められているゴム材料があるとします。
このゴム材料を製品に適用するとき、プレス機や射出成形機、あるいは加硫缶を使って加硫します。
ラボスケールであれば、ほぼ温度一定でシート状のサンプルを加硫できますが、製品スケールですとそうはいきません。
加硫開始はどうしても温度が低く、徐々に設定温度に上がっていくのが普通だと思います。
その場合、等価加硫量の考え方が役に立ちます。
等価加硫量(ECU)とは?
等価加硫量とは、「温度が変わると加硫反応の速度は何倍になりますか?」という指標です。
もし150℃×30分と同じ加硫反応進行度を140℃×60分で再現できたら、140℃での等価加硫量は0.5となります。
もし150℃×30分と同じ加硫反応進行度を160℃×15分で再現できたら、160℃での等価加硫量は2.0となります。
今回の場合は150℃×30分が標準の加硫条件ですので、150℃を中心に、温度が変わったら加硫反応の速度が何倍になるかを見ます。
ここでいう150℃を基準温度と言います。
どのように使うか?
例えば、未加硫状態のゴムを金型に入れて、プレス機にセットします。
10秒ごとにゴムの温度を測定しながら加硫を行います。
0〜10秒:120.0℃
10〜20秒:120.1℃
20〜30秒:120.4℃
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5分0秒〜20分10秒:130.0℃
5分10秒〜20分20秒:131.2℃
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そして、各区間の反応速度が150℃のときの何倍なのか、つまり等価加硫量はいくつなのかを調べます。
例えば、0〜10秒の区間の場合、温度が120℃です。
120℃での等価加硫量は0.125だったとします。
この区間で進む反応は、150℃でいうところの10秒×0.125=1.25秒分だということがわかります。
同様に、20分0秒〜10分10秒の区間の場合、温度が130℃です。
130℃での等価加硫量が0.25だったすると、この区間で進む反応は150℃でいうところの10秒×0.25=2.5秒分となります。
こうやって、各区間の反応時間(@150℃)を見積もって積算していきます。
その積算値が30分になったところで製品を金型から取り出せば、150℃一定で30分加熱した場合と同じ状態に仕上げることができるというわけです。
今回は10秒ずつ区切った例で説明をしましたが、この区切りは1秒でも何秒でもOKです。
細かく区切れば区切るほど、より精度良く反応を管理できるようになりますが、その分計算量が増えます。
等価加硫量はどうやって求めるのか?
各ゴム材料の等価加硫量を知るにはどうすればいいのでしょうか?
一般的な方法は、温度を振って加硫曲線を測定し、各温度の適正加硫時間(t90)を読み取ります。
t90は加硫曲線のトルクがmaxの90%に到達する時間のことです。適正な加硫時間の目安になっています。
今回のゴムですと、標準の加硫条件が150℃×30分ですので、150℃を中心に130、140、150、160、170℃の5水準でt90を求めます。
そして、横軸を1/温度 (単位はK-1)、縦軸をln(1/t90)としてプロットします。いわゆるアレニウスプロットです。
そして、直線の傾きを求めます。
傾きが求まったら、次の式で等価加硫量を計算できます。
等価加硫量=exp(傾き×(1/温度 – 1/基準温度))
計算例
例えば、傾きが-10000だったとします。
140℃の等価加硫量は、
exp(-10000×(1/(140+273)-1/(150+273)))=0.56
となります。
160℃の等価加硫量は、
exp(-10000×(1/(160+273)-1/(150+273)))=1.73
となります。
150℃のときと比べて、加硫反応の速度は140℃で0.56倍、160℃で1.73倍になりますよ、ということです。
もっと詳しく知りたいなら・・・
加硫等価量についてもっと詳しく知りたいなら、こちらの文献を読むと良いです。
本記事を読んだ後にこの文献に目を通すと、理解が深まるかと思います。
また、タイヤを例に加硫等価量について言及したこちらの文献も参考になります。