技術者の基礎知識

臨界点、蒸気圧の意味

物理化学で習った臨界点や蒸気圧。化学工学をやっている人なら本業でなじみがあると思いますが、そうでない人にとってはあまりなじみがありません。ということで、復習がてら、臨界点や蒸気圧の意味をさらっとまとめることにしました。

気体を圧縮していくと…(低温編)

とある物質が気体の状態で存在しているとします。この気体を圧縮して体積を小さくしていくと、当然ながらそれに合わせて気体の圧力が高まっていきます。

ところが、ある一定の体積以下になると、圧力がまったく変化せずに気体の圧縮が進んでいきます。この時の圧力を「蒸気圧」と言います。一定の圧力値(蒸気圧)を保ちながら、気体の体積がどんどん小さくなっていきます。

この時、気体の一部が液体に変化します。気体が凝縮して液体になることで、圧力を増すことなく体積が減少します。

言い換えると、液体と気体の両方が平衡で存在するときの圧力が「蒸気圧」です。

さらに圧縮していくと、気体はすべて液体になり、液体を圧縮してゆくモードに変わるため、圧力は急激に上がります。逆に言うと、相当な圧縮力をかけないと液体の体積は減らないということです。

気体を圧縮していくと…(高温編)

低温では、圧縮の過程で気体が液体に変わり、その間は一定の圧力値をキープすると説明しました。その時の圧力値が蒸気圧でした。

高温では、気体の分子が激しく動き回っているため、気体の体積をより圧縮させないと液化しなくなります。

そして、ある温度では、気体が液体に変わるプロセスが現れるか現れないのすれすれの状態になります。この時の温度、蒸気圧、体積をそれぞれ臨界温度臨界圧力臨界モル体積と言います。まとめて、臨界定数と言います。また、その状態を臨界点と言います。

その温度以上では、気体が液体に変わるプロセスが見られなくなります。終始、気体のまま圧縮され続けます。

終始気体のままなのですが、通常の気体に比べると密なので、気体とは呼ばずに超臨界流体と呼びます。

臨界定数の例

臨界定数は物質固有の値です。

例えば、CO2の場合、臨界温度≒31℃、臨界圧力≒73atm、臨界モル体積≒94cm3/molです。H2Oの場合、臨界温度≒374℃、臨界圧力≒218atm、臨界モル体積≒55cm3/molです。

臨界定数は重要

理想気体においては、温度T、圧力p、体積VはpV=nRTで紐付けられます。

一方、実在気体においては分子間相互作用が考慮され、物質によりそこが異なるため、温度、圧力、体積は物質に固有の係数を使った関係式で紐付けられます。実在気体の式はいくつかありますが、例えばファンデルワールスの式であれば、p = nRT/(V-nb) – a(n/V)^2となります。物質ごとにT, p, Vの関係式は変わります。

ところが、温度T、圧力p、体積Vをそれぞれ臨界温度、臨界圧力、臨界モル体積で割ったTr, pr, Vrを使うと、物質によらず同じ関係式で紐付けることができるようになります。ファンデルワールスの式ですと、pr = 8Tr/(3Vr – 1) – 3/Vr^2となり、物質固有の係数であったa, bがなくなります。

Tr, pr, Vrを換算変数といいます。物質の種類によらず、共通の関係式でTr, pr, Vrが紐付けられることを対応状態の原理といいます。

換算変数Tr, pr, Vrの値があれば、つまり、臨界定数が分かっていれば、さまざまな物性を推算できるようです。蒸気圧や粘度、熱伝導率など…。

物性推算法基礎

物性データが豊富にあれば、化学構造と物性を機械学習で直接紐付けて物性推算することも可能だと思いますが、物性データがない場合や定性的な解釈をしたい場合は、こういった物理定数を介して物性を予測していく考え方が重要になるなあと思いました。