世界の経済は、長い目で見るとゆるやかに成長していく。そして、株価も長期的には上昇傾向になる。この前提こそが、私たちが長期で資産運用を行うモチベーションになっています。
ところで、なぜ経済は成長していくのでしょうか?一言で言うと「資本主義」だからです。
なぜ資本主義だと経済が成長するかについて、長期で資産運用することの妥当性を腹落ちできるようこの記事にまとめました。
長期の資産運用を考えている人、または実際にやっている人はぜひ読んでください。
資本主義とは
資本主義の社会では、「お金をもっている資本家が自分のお金を増やそうとするモチベーション」が駆動源になり、経済がまわっています。
これに応えてくれるのが経営者です。経営者は、こうすれば儲かるというビジネスモデルを思いつき、実際にビジネスを実行するために”アイテム”を揃えようとします。アイテムとは、原材料、設備、人です。ビジネスをするための道具です。経営者のモチベーションは、お金を儲けようというものだったり、困っている人を助けようという正義だったりとまちまちです。
経営者は、これらのアイテムを揃えるために資本家からお金を募ります。「ビジネスで生まれた利益は資本家に還元しますので、ぜひ元手になるお金を出してください」とお願いするわけです。
経営者のビジネスプランに魅力を感じた資本家は、最悪、出したお金が返ってこないリスクを承知しながら、こいつのビジネスならうまくいってお金が増えるんじゃないだろうかと期待し、お金を出します。これを「出資する」といいます。
お金を増やしたい資本家と、ビジネスを始めたい経営者の思惑が一致した瞬間です。
ビジネスの元手になるものを「資本」といいます。資本家が出したお金も資本ですし、資本家が出したお金で買い揃えたアイテムも資本です。
なお、アイテムのうち、人とは実際に手を動かしてくれる労働者のことです。
経営者は、資本家から受け取ったお金でアイテムを揃えてモノやサービスを作り、それを売ってお金を獲得します。獲得したお金と元手の差額が、増えたお金として資本家の手元に残ります。
会社の利益はどのように生まれるのか?
日本型企業の場合、労働者に支払う給料は、基本的には固定です。原材料や設備と同じで、労働力にも固有の値段がついているからです。会社の利益が増えたからといって労働者の給料がそれに連動して上がるわけではありません。
労働者が稼いだお金からコストを差し引いたものが儲けになります。労働者に頑張って働いてもらって、彼らの給料以上の儲けを稼いでもらうことで、会社の利益が発生します。つまり、(労働者が稼いだ儲け – 労働者の給料)がそのまま会社の利益になります。
外資系企業の場合、労働者の給料は成果連動性のところが多いです。とはいえ、基本的には、労働者に給料以上の儲けを稼いでもらうことで利益を得ているという構造は日本型企業と同じです。
どうなると会社の利益は増えるのか?
労働者視点で考えてみます。労働者は、会社のリソースを活用してお金を稼ぎます。裸一貫の労働者だとお金を稼ぐのは難しいですが、会社の設備やブランド、人脈があれば、それらをうまく使うことで自らの労働力にレバレッジがかかり、お金を稼ぐことができます。お金を稼いで得た儲けの一部は自らの給料として懐に入り、残りは「会社の利益」となります。
労働者からすれば自分の給料分だけ稼げばいいわけで、会社の利益の分まで働く義理はありません。しかしながら、会社の利益が出ないと会社の存続自体が危ぶまれることになり、収入のよりどころを失いかねません。
そういう観点では、労働者にとっても自分の給料以上に儲けを出して会社の利益を生む必要性があるわけです。
経営者の視点に戻ります。
経営者は、出資してくれた資本家に報いる必要があるため、会社の利益を大きくしたいと考えます。①労働者にはたくさん稼いでもらいつつ、②労働者の給料が少なくて済めば、会社の取り分は増えることになります。
①労働者にたくさん稼いでもらう
儲け=売上 – コスト です。
まずは売上が立つように、人々に買ってもらえる商品(モノ・サービス)を労働者に開発させます。
売上が立ってきたら、商品の生産量をさらに増やして売上を伸ばします。量産化によって商品のコストも下がります。結果、儲けが増えていきます。
商品の販売量が増えると、当然他社も参入してきます。競争に負けないように値下げをしつつ、安い原料への切り替え、新製法の確立により更なるコスト低減をさせて儲けを確保します。
その傍らで、また新たに人々に買ってもらえる商品を開発させる・・・。この繰り返しです。
言ってしまえば、これが企業活動の全てだったりします。
こうやって便利で魅力的なモノ・サービスが継続的に生み出されます。モノ・サービスの需要と供給が時間とともに増えていき、GDPが上がっていきます。こうやって経済が成長していきます。
②労働者の給料が少なくて済む
前述のとおり、労働者に支払う給料というのは、基本的には会社の利益の多寡にかかわらず一定です。
給料の金額は、労働者が生活するために必要な費用で決められます。
会社が支払う給料は、社員が今のパフォーマンスで毎日働くために必要な費用から逆算して決められている。
生活に必要なモノやサービスの価格は、経済が成長するとともに下がっていきますので、必然的に労働者の生活費も下がります。
昔は高価だったパソコンは大量生産により製造コストが下がり、今では10万円以下で買えるようになりました。ジーパンやシューズだってずいぶん安くなりました。
労働者の生活費が下がれば、会社が労働者に支払う給料も少なくて済むことになります。
ただし、このあたりは①とは異なり個々の企業努力に応じて報われる話ではなく、各企業の努力の総量として結果論的に帰結するものです。
まとめると
お金をもっている資本家が、自分のお金を増やしたいと考えます。経営者は、こうすれば儲かるというビジネスモデルを描き、それを実現するための元手を資本家から募ります。資本家は、自分のお金を増やしてくれそうな経営者にお金を託して、お金が増えることを期待します。
経営者は、そのお金でアイテム(原材料、設備、人)を揃えてビジネスを実行します。ビジネスの結果生じた利益は資本家に還元されます。
ビジネスを続けるには、より大きな利益を生んで資本家からの出資を継続してもらう必要があります。経営者は、人(労働者)にたくさん儲けを出してもらい、利益を増やそうとします。労働者のコストは儲けによらずほぼ固定なので、労働者が生む儲けが増えれば、会社の利益も増えます。
労働者が利益を増やす活動とは、人々に買ってもらえるモノ・サービスを作って売ることです。そして、競合他社との競争に勝って利益を維持するためにモノ・サービスを安く提供する活動でもあります。
こうやって便利で魅力的なモノ・サービスが継続的に生み出されていきます。モノ・サービスの需要と供給が時間とともに増えていき、GDPが上がっていきます。こうやって経済が成長していきます。

個々の企業ではなく、経済全体にお金を投資し、長期保有すべき
とはいえ、全ての企業が利益を上げられるとは限りません。赤字続きで倒産する企業もたくさん出てくるでしょう。
ですので、ここの企業に投資するのではなく、経済全体にお金を投資すべきです。具体的には、TOPIXやMSCIコクサイのようなインデックス指標に連動する投資信託やETFを買うべきです。
そして、短期的には好景気になったり不況になったりを繰り返すため、含み益、含み損が大きく変動します。短期的な変動に動じず、長期でずっと金融商品をホールドすることが重要です。資本主義のメカニズム上、長期的に見れば金融商品の価値は上昇するからです。
自分や自分の同僚、競合他社の社員の働きぶりを見ればわかると思いますが、みんな利益を上げるために日々頑張っています。なんら経済活動をしていない状態よりは上向くはずだと感覚的にも理解できると思います。
最後に、ピーター・リンチの言葉を掲載して終わりたいと思います。
株の下落は特に驚くことではない。繰り返し起こることであり、ミネソタの寒気と同じくらい普通にあることだ。寒い地方に住む人は、いずれ凍り付くような季節がやって来ることを知っている。だから、外の気温が氷点下になっても、次の氷河期が始まったとは考えない。防寒着を着て、道路に塩をまき、夏にはまた暖かくなると思うだけだ。
ミネソタ州民と寒気との関係は、株の銘柄選択で成功している投資家と株式市場の下落のそれと同じである。やって来ることは分かっている。乗り切る用意もできている。ほかの株といっしょにお気に入りの銘柄が値下がりしたら、すかさず買い注文を入れるのだ。
