技術者の基礎知識

アレニウスプロットの意味やうれしさを、数式を使わずに説明する

アレニウスプロットは温度加速試験の結果から寿命を予測するときなどに使う、技術者必須のツールです。

大学の物理化学でも習いますし、実務の中でも使う場面が多いと思います。

多くの人にとってアレニウスプロットは身近なものだと思います。

アレニウスプロットを一度やっているのなら、定量的なところは押さえられていると思います。ネットで検索すれば、アレニウスの式に関する定量的な解説はたくさんヒットします。

一方で、定性的な意味合いを理解している人って意外と少ないのではないでしょうか?

ここでは、アレニウスプロットが引けると何がうれしいのか、その定性的な意味合いについて簡単に説明します。

まずは、アレニウスの式の形から

k=A・exp(-Ea/RT)で表されたり、lnk=lnA -Ea/RTの形で表される、あの式です。

横軸に1/T、縦軸にlnkを取って直線を引いたものが「アレニウスプロット」です。

これ以上は説明しません。

アレニウスプロットが意味するところ

アレニウス式とはつまるところ、「温度が決まれば反応速度も決まる」ことを表した経験式です。

アレニウスプロットを見れば、25℃だと反応速度は○○、35℃だと反応速度は△△だとわかります。

ザッツオールです。

それでは、アレニウスプロットが引けると何がうれしいのでしょうか?

うれしいこと①:室温付近での耐久性の寿命が予測できる

取り扱う反応が、ポリマーの酸化劣化反応だとします。いわゆる劣化です。

そして、25℃だと一体何年もつのかを知りたいとします。

85℃で実施した温度加速試験では、30日である物性が規定値を下回ったため、30日が寿命だとわかりました。

アレニウスプロットを見ると、85℃における反応速度は25℃のときの64倍だとわかりました。

すると、25℃の寿命は30日×64倍=1920日(約5年)になると推定できます。

アレニウスプロットが引けると、反応速度の比から室温での寿命が推定できるので便利です。

温度を上げて、短い時間で試験する。アレニウスプロットを引く。室温での耐久性を推定する。こういう流れです。

注意点

注意点は、試験時間を短縮するためにいくらでも温度を上げればいいわけではないということです。

例えば、サンプルのガラス転移温度(Tg)が80℃だとすると、80℃前後より高い温度では加速倍率が読めなくなります。

なぜなら、Tgを境に反応のモードが変わり、アレニウスの式の定数(活性化エネルギーや頻度因子)が変化してしまうからです。

10°C2倍則(10°C半減則)

ポリマーやゴムの場合、酸化劣化の反応速度はだいたい10℃上がると2倍になります。

詳細はこちらをご参照ください。

10°C2倍則(10°C半減則)は本当に成り立つのか?樹脂材料の寿命を予測する場面でよく出てくるのが「10℃2倍則」です。10℃上がれば劣化が2倍になるという経験則のことです。10℃半減則と...

うれしいこと②:反応条件を自由に調整できる

例えば、150℃×10分で接着する接着剤があるとします。

接着時間をもっと短くしてコストダウンしたい場合、アレニウスプロットが役立ちます。

160℃での反応速度が150℃のときの2倍だったら、160℃×5分で済むことになります。

接着剤を塗る場所が製品の奥の方にあり、加熱しようにもなかなか熱が行き渡らないと頭を悩ますケースもあります。

そんなときは、温度を低くして接着時間を長くとることで対応できます。

例えば、140℃での反応速度が150℃のときの1/2倍だったら、接着条件を140℃×20分とすることができます。

うれしいこと③:温度が刻々と変化する場合にも対応できる

先ほどの接着剤の例で説明します。

接着剤を塗ったあと室温の恒温槽に入れ、恒温槽の電源をONにして150℃に昇温することを考えます。

前述のケースとは違い、温度は刻々と変化していきます。

一体、どのくらいの時間が経てば、150℃×10分相当の反応が進むことになるのでしょうか?

答えは簡単で、例えば10秒ごとに槽内の温度を確認すればOKです。

0〜10秒:30.0℃
10〜20秒:30.1℃
20〜30秒:30.4℃



20分0秒〜20分10秒:120.0℃
20分10秒〜20分20秒:121.2℃


そして、各区間の反応速度が、150℃のときの何倍なのかをアレニウスプロットから読み取ります。

例えば、0〜10秒の区間の場合、温度が30℃です。

アレニウスプロットから、30℃での反応速度が150℃のときの1/4096倍だとわかりました。

よって、この区間で進む反応は150℃でいうところの10秒×(1/4096)=0.002秒分だけということになります。

例えば、20分0秒〜10分10秒の区間の場合、温度が120℃です。

アレニウスプロットから、120℃での反応速度が150℃のときの1/8倍だとわかりました。

よって、この区間で進む反応は150℃でいうところの10秒×(1/8)=1.25秒分だけということになります。

こうやって、各区間の反応時間(@150℃)を見積もって積算していきます。

その積算値が10分になったところで製品を恒温槽から取り出せば、150℃一定で10分加熱した場合と同じ状態に仕上げることができるというわけです。

今回は10秒ずつ区切った例で説明をしましたが、この区切りは1秒でも何秒でもOKです。

細かく区切れば区切るほど、より精度良く反応を管理できるようになりますが、その分計算量が増えます。

このような反応管理は、ゴムの世界でも日常的に使われています。等価加硫量(ECU)と呼ばれるものです。

等価加硫量についてはこちらの記事をご覧ください。

ゴムの成形でよく聞く等価加硫量(ECU)とは?等価加硫量という言葉を聞いたことはないでしょうか? ゴムを取り扱った人なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。 ここでは...

まとめ

アレニウスプロットが描けると、室温付近での材料の寿命が予測できたり、反応条件を調整できたり、温度が刻々と変化する環境にも対応できたりと、うれしさがたくさんあります。

アレニウスプロットの定性的な意味合いがつかめれば、様々な場面で使いやすくなるかと思います。

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