最新技術を理解する

【次世代通信】5Gが情報通信を増やす仕組みと、高周波数化のため必要な技術

今後主流となる5G(第5世代モバイル通信システム)を理解するために、通信を高速道路に例えて考えてみます。

高速道路を走る車が情報です。

文字情報だけじゃなく、画像、音声、動画と、やり取りされる情報は日に日に増えており、車の通行量は増加の一途をたどっています。

この時勢に対応するためには、渋滞が起きないように高速道路を拡張しなければなりません。

まずは4Gの特徴から

4Gは、限られた土地を有効に活用することで高速道路の渋滞をなくし、車の走行をスムーズにしました。詳しくは以下の3つに集約されます。

①高速道路の道幅を広げて、車線を増やした

片道1車線の高速道路を2車線、3車線に広げました。

具体的には、電波の周波数の幅を従来のΔ5MHzから~Δ20MHzに拡張しました。

800MHzのところにある高速道路の場合、従来は797.5~802.5MHzの道路幅が790~810MHzに広がったということです。

②高速道路を束ねて、車線をさらに増やした

例えば500MHzのところにある高速道路(道路幅20Hz;490~510MHz)と800MHzのところにある高速道路(道路幅20Hz;790~810MHz)、そして900MHzのところにある高速道路(道路幅20Hz;890~910MHz)を1つの高速道路のように見立てることで、道路幅60Hzの高速道路に作り直したというものです。

3本の高速道路はそれぞれ別の場所(周波数域)に存在するため、これまではそれぞれ孤立した高速道路でした。

それが1本の広い幹線道路のようになるわけですから、3本が孤立していたときよりも車の流れがスムーズになります。

この技術をキャリアアグリゲーションと呼びます。束ねるという意味ですね。

③高速道路を2階建て、3階建てにして、縦方向に拡張した

例えば800MHzのところにある高速道路を3階建てにするイメージです。

3階建てにすれば、交通量が3倍になっても大丈夫ですよね。縦に重なった高速道路は、実際に東京湾岸や阪神湾岸にいくと見かけます。

送信側、受信側のアンテナを増やすことで、高速道路を建て増しすることができます。

この技術をMIMOと呼びます。MIMOとは、multiple-input and multiple-outputの略です。送信側、受信側をマルチにしようということです。

5Gとは何か?

そして、5Gは、さらなる高速道路の拡張を目指したもので、ざっくり以下の2つが技術の肝になります。

未開の土地を開拓する

高速道路を増やすために、未開の地を開拓しようとしています。未開の地とは、周波数の高い高周波帯のことです。

数十GHz(数万MHz)というエリアで、ミリ波帯とも呼ばれます。

このエリアを利用するのは技術的にいろいろと難しく、これまでは誰も使用していない周波数帯でしたが、技術の進歩により利用が可能になりつつあります。

高速道路を建て増しして、さらに縦方向に拡張する

2~3階建てというレベルじゃなくて、思い切って100階建てにしてしまおうという話です。

これはMassive MIMOという技術です。送信側、受信側のアンテナをめっちゃ(=massive)増やすということです。

5Gの特長まとめ

5Gは拡張されるレベルがすごいので、現状の4Gに対して

・「通信速度」は100倍

・「通信の遅れ」は1/10

・「同時に接続できる数」は100倍

になる見込みです。

5Gが4Gが置き換わるんじゃなくて、4Gは今後も存続し、そこに5Gが新たにプラスされるイメージです。

・「通信速度」が速いため、容量が重たい動画やゲームがさくさく使えるようになります。画質もすごく良くなるでしょうね。

・「通信の遅れ」が無いため、遠隔手術とか、リアルタイムの通信が欠かせない分野がますます発展するでしょう。

・「同時に接続できる数」が多いため、色んなモノがネットに繋がるIoTはさらに拡大していくでしょう。

高周波数化のため必要な技術とは?

先ほど、未開の土地(高周波域)を開拓する話をしました。

高周波数域デメリットを挙げると、こんな感じです。

①電波はぼんやりした明かりじゃなくてビーム状なので、全員に行き渡らない

②けれど遠くまで届かない

③しかも通信機器の中でロスしやすい

最近になって、①②③のデメリットを解消するための技術的な目処が立ってきました。いよいよ、”未開の地”の開拓が本格化しつつあります。

どのように解消していくのか、まとめるとこんな感じです。

課題① 電波はぼんやりした明かりじゃなくてビーム状なので、全員に行き渡らない

低周波数の電波というのは、言うなれば基地局の周辺にぼんやりと灯った明かりです。電波を複数の人でシェアしている状態ですので、基地局の周辺にいる人たちには電波が漏れなく届きます。人が多すぎると、1人あたりの配分が減って通信が悪くなる問題もあるんですけど、まあその話は置いておきましょう。

一方、高周波数の電波というのは、言うなれば基地局から発されるビーム状の明かりです。全員に行き渡らないのが問題でしたが、ビームの方向を各人に向けることができる技術が開発されて、各人が自分専用の電波を強度maxで受け取ることができるようになりました。

また、基地局周辺にいる全員に電波を届けるには、たくさんのビームが必要になります。ここは、5Gになって高速道路のキャパが増強されますので、ビームをたくさん放つことができます。

課題② けれど遠くまで届かない

空気中の水分にエネルギーを取られて電波が弱まることが原因です。水分子(H2O)は、高周波数の電波を吸ってH-O-Hの結合の伸縮運動にエネルギーを費やします。

空気中の水分を無くすことはできませんので、どうやるかといいますと、ビームを細く絞って、濃い電波にします。そうすれば、電波が薄れるまでの距離を稼ぐことが出来て、電波が遠くまで届くようになります。

課題③ しかも通信機器の中でロスしやすい

高周波の電波は、送信側、受信側の通信機器の中でエネルギーが熱となりロスし易いことが知られています。このエネルギーロスのことを伝送損失と呼びます。最近、伝送損失を小さくできる材料開発が進んでいます。

高周波の電波を使う技術は、5Gの他、ミリ波レーダと呼ばれるところにも使われます。

ミリ波レーダは、5Gで使う電波よりも高い周波数領域を使うもので、自動車の前方にいる物体や人を検知するセンサに応用されています。

https://punhundon-lifeshift.com/post-132

自動運転には欠かせないやつです。ですので、伝送損失の小さい材料のニーズはとても高いです。

https://punhundon-lifeshift.com/post-127

専門的な話になりますが、低損失化のための基板材料の方向性は材料の誘電率とtanDを下げることです。

これまではガラエポ(ガラスエポキシ)と呼ばれるものやポリイミドが呼ばれるものが使われていましたが、高周波向けには誘電率やtanDがさらに低い液晶ポリマー、究極はフッ素樹脂が使われるようになると思います。

液晶ポリマーを使った基板は村田製作所のメトロサークという製品が有名です。iPhoneXに採用されて話題になりました。パナソニックも液晶ポリマーの基板をやっています。フッ素樹脂はアメリカのロジャースという会社が出しています。あとは、ポリイミドと液晶ポリマーの間に位置するビスマレイミド-トリアジンなる材料を三菱ガス化学が手がけています。

満車状態の低周波数帯を何とかうまく利用する切り口

色々と書きましたが、高周波領域っていうのはやっぱ難しいです。

4Gからの変化点も大きく、設計も色々変えないといけないため、コストが嵩むことも不安材料です。今までの低周波数帯が使えたらいいんですが、もう空きが無くて満車状態です。

実は、この満車状態の駐車場を何とか活用できないか、という取り組みもされています。詳しくは書きませんが、私が知っているのはこのようなものです。

電波の波形をいじる

一つは、電波の波形を少しいじることで、1つの周波数=1つの電波、から、1つの周波数=複数の電波、を生み出す試みです。

SAWフィルタを使う

もう一つは、受信側にSAWフィルタと呼ばれる電波のノイズカットをするフィルタです。このフィルタの性能を上げて、駐車スペースの隙間を生み出す試みもされています。

例えば、100MHzの電波だけを受信する装置で、SAWフィルタのノイズカット性能が±10MHzだとしたら、この電波の実質の使用領域は90~110MHzになります。

ノイズカットの性能が±2MHzに上がったら、実質の使用領域は98~102MHzになり、90-98MHz、102-110MHzの空きスペースが生まれることになります。